方丈便り 第15号 中学3年生 04・08・28(土) 発行者:橋本
「森」を見て「木」を見ず
私は学生時代、とにかく自分が成長することばかり考えていた。
「速く走ることができる者は、ゆっくり歩くことだってできる」のだから、と
とにかく、自分が大きくなることばかり考えて生活していたのだ。
結果、私には少なからず得意なことができた。
しかし、アルバイトを始めるようになると、「なんでできないの?」と、
教わっていないことを、当然のことのように要求してくる人もいた。
「この人は自分の常識を人に押し付ける人間だ」と思うのと同時にはっとした。
気付かないうちに、私もそんな人間になってしまってはいないか。
人には得手不得手がある。興味・関心の度合いもまるで違う。
にもかかわらず、私は、私のできることができない、もしくは苦手とする人を
軽視する人間になってしまっていることに気が付いた。
人にものを任せられない人間になっていた。
先輩・上司・親。
私達は誰もがいずれ「先生」になる。「先」に「生」きてきた人間だ。
自分ができるからといって、人が同じようにできるとは限らない。
同じように、自分にもできないことがいくらでもあるのだ。
当たり前のことだが、意識しているかどうかで人との接し方は大きく変わってくる。
目線の高さは数センチ変わると、まるで違った視界になるという。
確かに高い視点でものを見れば、遠くまで視界が開けるのだろう。
しかし同時に、腰をかがめて子供の視点でものをじっくり見ることは難しい。
「速く走れる人がゆっくり歩くこと」は思いの外難しいのだ。
決して人前では膝を折らない。
そう踏ん張って胸を張り続ける人間も強い人間だと思う。
ただいくら優れた人間であっても、自分1人で出来ることには限界がある。
知っていても知らないように振舞える。
頭がよくても、ばかみたいにはしゃげる。
いつでも腰をかがめられる、大きな人間。
難しいけれども、そんな人間に私は強く憧れる。